しょっちゅう「胸が痛い」と言っては病院に行ったり救急車を呼んだりする祖母が、詳細な検査を受けるため入院してからの数日間、私の心は穏やかでした。
救急車を呼ぶこともないし、変な時間に病院に連れて行けと連絡が来ることもないし、他人に電話して迷惑をかけることもない。
病院にいてくれればひとまず安心ということで、忙しい日々を仕事に集中して過ごすことができました。

そんな平和もつかの間、入院から三日後、また総合病院から電話が来ました。

「◯◯病院の医師です。おばあさんの件なのですが、冠動脈の検査をするため造影剤という薬を使いたいと思っています。造影剤は2〜3%ですが、命に関わる副作用が起こる可能性がありますのでご家族の同意が必要です。使っても良いですか?」

電話口で同意し、なんだかよく分からないけど大変な検査をするんだなぁ…と少し動揺しました。
副作用とやらが出たら命に関わるみたいだし、結構リスクの高い検査なのかなぁ…などと、珍しく祖母のことを心配したりして。
鹿児島にいる母にも電話で報告したら、私の動揺をよそに「しょっちゅう病院に行くんだから、この機会に原因をしっかり調べた方が良いんじゃない」とクールな対応でした。
おばあちゃんのことなど全く心配じゃなさそうな雰囲気に少し違和感を感じてしまいました。

翌日また電話が鳴りました。

「◯◯病院の医師です。おばあさんの件なのですが、造影剤を使った検査をしようと思っていましたが、ご本人が『もう良くなった。検査はしない』とおっしゃるんですよ。実際、入院生活を見ていても胸が痛くなる症状が出てこないので、ご家族としては、それでも検査をしたいかどうかご検討頂けますか?」

『もう良くなった。検査はしない』その言葉の「もう良くなった」というフレーズが頭の中をリフレインしました。

あんだけ大騒ぎして毎日毎日病院に行って、入院したら「もう良くなった」だって!?

私は祖母に入院が必要と聞いて、手を握って優しい言葉までかけたのに「もう良くなった」!?

それまで祖母に同情していた心が一気に怒りの炎に包まれ、祖母の傍若無人な振る舞いに激しい憎悪の念が湧いてきました。

ご家族としてはそれでも検査をするかどうかご検討くださいと言われたって、こっちは祖母の言動に振り回されているだけなのにどうしろというんだろう、と途方に暮れましたが、とにかく事の顛末を母に報告すると、母は大笑いして、

「どうせこれからも病院行くんだから、検査はしてもらった方がいいんじゃない?」

と何とも適当な感じで言われ、動揺しているのは私だけのような状態に。。

この時、これまでもこんなことがたくさんあったんだろうなという考えが頭をよぎりました。
母が祖母の入院に対してクールだった理由が分かった気がしました。
そして、家族としては検査をしてもらいたいという意思を伝えるため病院に電話すると、

「◯◯病院の医師です。おばあさんがやはりどうしても検査はいらないとおっしゃっていまして…。様子を見ていても、胸が痛い症状は出て来ませんし、無理に検査をしなくてもいいかもしれません…」

とモゴモゴした感じのことを言われ、結局、検査はしないことになりました。

「ご本人もそろそろ自宅に帰りたいと言っているので、いつでも退院できますので迎えに来てください」

少しでも本気で心配した自分がアホらしく思えて、入院・狭心症・造影剤という言葉にも驚かなかった母のこれまでの苦労を実感したのでした。

猫

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カウンセリングサービス所属 心理カウンセラー
渡邊 睦代丨Watanabe Mutsuyo

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