一昨年(2019年)、父が認知症と診断されました。
その時は63歳。
その4、5年前には父の様子に違和感を感じていたので、60前には発症していたのではないかと思います。
もともと豪快で血気盛んな性格であること、年齢的にまだまだ若いことから、私も母もショックが大きかったです。

私の実家は父が自営業をしているのですが、父が認知症になり仕事に支障が出ていたことから、昨年私が家業を継ぐために地元に帰ってきました。

地元に帰ってくる前は父にもできることはやってもらって一緒に働こうと考えていました。
認知症だからって何もさせずに家の中でじっとしていてはますます進行してしまうのでできるだけ仕事は続けた方が良いと、私も夫も恐らく母もそう考えていたと思います。
しかし、父の側で暮らしてみると、私が思っていた以上に状態が悪くて一緒に働くことは難しい状況でした。
なんとなく家の中に重くて暗い空気が流れていました。

仕事場で母とふたりきりになった時、「お父さん、思ってたより進んでるね」と私が言うと、母が「でもお父さんは、そうとうやりたいことやって生きてきたと思うよ」と言いました。
うちは田舎の小さな自営業者ですが、それでも父は経営者ですので、新しく事業を始めてみたり、うまくいかなければすぐにやめたり、母の意見など全く聞かずに思うようにやってきたので、母の言葉は重く感じられました。

少し離れたところで暮らしている母方の祖母がうちに来た時も、「あなたのお父さんはやりたいことやって、十分やりきったと思うよ」と漏らし、父の周りの家族はたいへんな思いをしてきたのだなぁと改めて感じました。

私の家族は父について「人の意見も聞かずに自分のやりたい放題やる人」というイメージを持っていて、私も長らくそう思ってきました。
でも今は、父はやりたいことができなかった人なんじゃないかなと思っています。

父は四人兄弟の末っ子で、父が大学生の時に父親(つまり私の祖父)を亡くしています。
祖父が亡くなったので、父が地元に帰ってきて家業を継ぐことになったと聞いています。
父が家業を継ぐことになった経緯について詳しく聞いたことはありませんが、私自身が大学生とか20代という年代になった時に、「もしかしたら父は何かやりたいことを諦めて地元に帰ることになったという思いを抱えていたかもしれないなぁ」と思った瞬間がありました。

大学を出たら都会で暮らしたかったかもしれないし、何かやりたいことがあったかもしれないし、若い時代を自由に生きてみたかったかもしれない。

私は父のことを、人生で一度も誰かに雇われることもなく、ずっと社長としてやりたいようにやってきた恵まれている人、と思っていましたが、もしかしたらそういう訳ではなかったのかもしれないと思ったんです。

本人に聞いた訳じゃないので私の勝手な憶測ですが、父にとって本当にほしいものが「自由に生きること」だったのだとすれば、家業を継いでから何をやったとしても、「自分のやりたいことができている」とは思えなかったんじゃないかなと思います。

実は私自身も家族から「あんたは好き勝手やりたい放題やって、親の言うことは何にも聞かん子」と言われてきました。
確かに私は、小学生の時はいっぱい習い事をして、中学からはお金をかけて島の外の学校に行かせてもらい、大学は東京に行き、数年間就職せずにやりたいこと探しをしていました。
客観的に見ると、すごく自由で、やりたいように生きている人なのかもしれません。
そんな私は、昔も今も、なんだか自分の人生を生きられていない感覚を持っています。

小学生の頃は家の事情で、父方の祖母と暮らしていました。
両親宅と祖母宅は目と鼻の先で、両親宅で夕飯を済ませ、夜9時に祖母宅に行っていたので、親と離れ離れな暮らしをしていた訳ではありません。
しかし、両親宅を離れなければならないのは、毎晩猛烈な孤独感を感じていました。
いっぱいやっていた習い事も、親や祖父母からのプレッシャーが窮屈で、ありのままの自分を見てもらえない、何もできない自分は愛してもらえない感覚を味わっていました。
親は「お前には色々やらせている。お金をかけている」と言うけど、それらは全て、私の本当にほしいものではない、と思っていました。
私が本当にほしかったのは、何もできないありのままの私を受け入れてくれる両親の愛、そして、両親と一緒に暮らすことでした。

中学で親元を離れてからも、そうとうお金をかけてもらいましたが、やっぱり私が本当にほしいのは、両親と一緒に暮らすこと、優秀じゃなくても、何かをすごく頑張っていなくても、そんな私を両親が愛してくれることでした。

でも、私が望む本当にほしいものは、求めても求めても両親から理解されることはなく、それは手に入らないものなのだと諦めてからというもの、両親は私にとても満足しているようでした。

本当にほしいものを諦めた状態で、どれだけやりたいことをやっても、自分の人生を生きてるとは思えないものなのだと思います。

それは、私と父の共通点なのかもしれません。


三十路近くになるまで、本当にほしいものがもらえなかった怒りで、人生がうまくいきませんでした。
諦めても諦めても、怒りや悲しみや寂しさが湧いてきて、今この時を生きることができていませんでした。

親からもらえなかったものを恋人や友人からもらおうとしたこともあったし、
もらえなかったものを誰かにあげようと躍起になったこともありました。
それらはどこか依存的で押し付けがましく、良い効果がありませんでした。

両親の“子供にあげたいもの”と私の“親からもらいたいもの”のアンマッチにより生じた悲劇ですが、両親は自分たちが価値があると思うものを精一杯与えてくれていて、そのことへ心の中で何度も感謝しました。
孤独やプレッシャーの中、必死に生き抜いてきた子供時代の自分を何度も何度も承認しました。
その上で、本当にほしいものがもらえなかったという経緯とは関連付けずに、今生きている現実で一つ一つ中立的な目線で選択を重ねるようにしました。
そうする中で少しずつ、過去に囚われずに今を生きることができるようになってきた気がします。

過去の自分がほしかったものへの執着を手放していくことで、今を生きることができるようになっていきます。
何度も何度も感謝と承認を繰り返すことで、少しずつ自分の人生が取り戻せていけるのです。



こちらもおすすめ





○●○●○●○●○

<カウンセリングメニューのご案内>

【電話カウンセリング】
1回45分(電話かZOOM音声(ビデオオフ)をお選びいただけます。)

★どなたさまでも、初回は無料でお試しいただけます。

◇4回セット 14,300円(税込)
◇単発(1回)  5,280円(税込)

【カウンセリング予約センター】
◇電話番号:06-6190-5131
◇営業時間:12:00〜20:30
*定休日:月曜日(月曜日が祝日の場合は翌火曜日)
*「渡邊のカウンセリングを受けたい」とお伝えください。

【ご予約可能なスケジュール】
下記リンクからご確認いただけます。

*॰ॱ୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧*॰ॱ
カウンセリングサービス所属 心理カウンセラー
渡邊 睦代丨Watanabe Mutsuyo

<カウンセリング予約センター>
電話番号:06-6190-5131
営業時間:12:00〜20:30
定休日:月曜日(月曜日が祝日の場合は翌火曜日)
﹡「渡邊のカウンセリングを受けたい」とお申し付けください。
*॰ॱ୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧*॰ॱ